2013年5月25日土曜日

神経科学者アンケートの結果

数ヶ月前にふと、
 「自分に近い分野(神経科学、特にシステムや神経生理)の研究者ってどんな雑誌を定期的にチェックしているのだろう?」
 「それが分かれば、投稿先を決めるときや論文紹介の参考になるんじゃないか」
と思って、facebookで以下のようなアンケートを行わせて頂きました。
https://apps.facebook.com/my-polls/?fb_source=bookmark_apps&ref=bookmarks&count=0&fb_bmpos=2_0

【質問】以下のジャーナルの中から毎号チェックしているものを選んで下さい。 (「 チェックしている」の目安としては「Table of Contentsを見て興味のある論文がないか確認する」程度のもので結構です)

友達にしか公開しなかったのですが、なんと25名もの方々から回答を頂きました!
(ご協力頂いた皆さん、ありがとうございます!)
そこでせっかくですので、結果をここで公開させて頂きます。


まずは、ナマの回答結果から。



「Journal of Neuroscience」が堂々の一位。神経科学分野での一流誌という位置づけなのではないでしょうか。確かに質・量ともに高く、読んでいても毎週2~3報は興味を引く論文に出会うことができます。
しかも、インパクトファクター的には上位である「Nature」「Science」「Nature Neuroscience」「Neuron」よりも「JNS」の方が、得票数が多いというところが興味深いです。結果を見る前は、なんとなく「インパクトファクターが高い雑誌が、得票数も高いんだろうな」と予想していたので、ちょっと意外でした。

「Nature」「Science」は一般誌なので、読んでも分野外の内容が多く「期待外れ」になってしまうことが多いのかも知れません。
しかし、同じ神経科学の専門誌である「Neuron」「Nature Neuroscience」の得票数が低いのはなぜなのでしょう?

今回の得票数とインパクトファクターの関係を見てみると研究者の行動が分かってなんだか面白そう、と思ってもうちょっと調べてみました。


まずこちらがインパクトファクターと得票数の散布図です。ただインパクトファクターが右に裾野が長い分布をしているので、対数を取ったほうがよさそうです。


こちらがインパクトファクターを対数にしたもの。予想通り右肩上がりの線形の相関(=インパクトファクターが高いものほど得票数が高い傾向)が見られます(図の直線)。しかし、それでも分布がきっかりと直線上に乗ってこないということは、その他の要因が働いているということです。
そこで「線形回帰で予測できる成分を引いてしまった後の残差」のみを比べてみました。これによって、インパクトファクターに依存しない得票数が見られるはずです。


こちらが縦軸を残差のみにしたもの。そうすると上下で特徴が見えてきました。

(1)「(インパクトファクターの割に)得票数が高いもの」
…「J Neurosci」、「J Neurophysiol」、「Neuron」、「Nat Neurosci」
このあたり神経科学の専門誌が並んできます。先ほどの「Neuron」、「Nat Neurosci」もやはりトップグループです。
特筆すべきは「J Neurophysiol」の健闘でしょう。「J Neurophysiol」のインパクトファクターは年々下がってきてしまっていますが、私のピアたちはしっかりとチェックしていると言う意味で、論文投稿した際の「実インパクト」は高いと言えそうです。

(2)「(インパクトファクターの割に)得票数が低いもの」
…「Brain」、「J Physiol」
まず「Brain」は神経科学の中でもかなり臨床寄りの内容です。そのため、基礎の研究者が多い私のつながりではあまり読まれないのかも知れません。
また「J Physiol」は、生理一般が対象であるため分野外の内容が多なってしまい、読んでもヒット率が低いことが不人気を生んでいるのかも知れません。

残りのものは、まあだいたい線形回帰に従っている感じですかね。若干Review雑誌は得票数が低いようですが。


皆さん、いかがでしたでしょうか?予想通りでしたでしょうか?


自分としては「やはり『J Neurophysiol』は重要だ!」ということが確認できて面白かったです。

もし「もっとこう解析したら面白い」なんていうアドバイスがあれば是非ご意見下さい。
また、今回のアンケートではFrontier系やPLoS系などを選択肢に入れることをすっかり忘れていたので、また気が向いたらアンケートするかも知れません。

その際には是非ご協力下さい!!